一人前の脊椎外科医を目指して

医師12年目ぐらいの整形外科医が、一人前の整形外科医・脊椎外科医を目指すブログです。研究留学・論文・資産形成・備忘録などを載せていきたいと思います。 現在、米国spine centerへの臨床留学から帰国後、現在は某地方都市で整形外科医として勤務しています。

タグ:論文

前回記事の続きになります。


前回の記事では、英語の学習には


「目的意識をしっかりもつ」


ことが重要であることを書きました。



漠然と英語の勉強を開始する (例えば、本屋にあるような英会話の本やラジオ英会話の教材などを闇雲に始める) ことは得策ではありません。

始めようと思い立った時や、本を購入した時などはモチベーションが最も高い時ですので、それはいいのですが、そのモチベーションがずっと長続きすることは まず ありえません。

自分の目的に合わせた、焦点を絞った学習が必須です。


そこで、次のロールモデルを考え、必要な英語の学習方法について考えてみたいと思います。



 医師5年目の整形外科医。一度は英語論文を書いてみたいと考えている。また、留学も将来的には視野に入れたい。



前回も書きましたが、これは4年前 (大学院入学前) の私になります。

この時、私は英語の学習を開始するに当たって、以下の事を考えました。



 ① 英語論文の執筆: 整形外科分野の英単語知識 + 論文を書くための英語

 
 ② 留学英語資格の取得 → TOEFL や IELTS に向けた英語学習


これについて、1つずつ考えていきたいと思います。






① 英語論文の執筆


英語論文を書こうと思うと、当然ですがpublishされている英語論文をちゃんと読んで理解できる力が必要です。特に、 論文の最初のパートである introduction では、

「これまでの研究や論文で明らかになっていること」
そして、「未だ明らかになっていないこと」を簡潔にまとめた上で、研究の目的がそれに沿ったものであるかどうかを記載します。

この時点で 、過去の論文をきっちり理解することが当然ながら必要です。


英語論文の文献のまとめ方については、今後別の記事で書こうと思っていますが、今回は、論文を「書く」ことを意識した論文の「読み方」について まとめてみます。



英語論文を書いていてまず思うことは、英語論文は「英借文」である、ということです。

過去の論文から全てを引用してしまうと剽窃 (plagiarism) になってしまいますが、英文の構文や言い回しなどは、非ネイティブの僕たちには理解しづらいものなので、使えるところは利用させてもらおう、という意味です。


また、単語そのものも、当然ながら専門用語が多く飛び交いますので、それらを知っておかないと論文を読めないし、書けません。

そして、当然ながら過去の論文の正確な理解と、それをできるだけ短時間で出来る能力が必要です。


以上から、僕が英語論文の執筆の為に必要な英語学習として立てた戦略は、



 A.  英借文 (Writing)

 B.  専門用語の英単語 (Writing)

 C.  過去の論文の正確 かつ 短時間での読解 (Reading)


になります。





 A.  英借文 (Writing)


まず本文の4つのsection (introduction, materials and method, results, discussion) ごとに分けて、そこで使われている表現をWordファイルや手書きのノートに書き出すようにしました。

例えば、 intdoductionでの表現で、自分の研究の目的を示す構文として、

" In the present study, we aimed to elucidate …(研究内容)."

みたいな形で、 自分が使えそうだと感じる「カッコいい」表現を書き出しました。

以前に紹介した英語論文で参考になる書籍でも例文が多く載っているのですが、それをアレンジする形で加えていきました。



B.  専門用語の英単語 (Writing)


これも同様に、 Wordファイルや手書きのノートに書き出す形式を取りました。

ただ、これで僕が注意していたのは、単なる単語だけではなくて、その定義や分類なども余裕があれば書き出していました。

例えば、脊椎の矢状面バランスの論文には

"Pelvic incidence (PI)" "Sacral slope (SS)" "Pelvic tilt (PT)" "Sagittal vertical axis (SVA)" "Thoracic pelvic angle (TPA)"


などなど多くの専門用語や略語 が飛び交うのですが、その単語の定義がどの論文に載っていて、もし記載するならどの論文から引用してくるといいかどうか

についてもメモしていくようにしました。後々自分が論文を書く時に便利だと考えたからです。



C.  過去の論文の正確 かつ 短時間での読解 (Reading)


これが最も難しいところですね。

僕はまずは短時間で読解できることを目標に、論文を読む練習をしました。


まず、特に時間のない時は、abstract だけを読んで論文の概略を理解し、それが自分の必要とする論文かどうかを判断します。

この時点で5割ぐらいはその論文の理解が出来る印象です。


次に、introductionの最後のパラグラフ, resultsのfigureとtableがついている部分, discussionの各パラグラフの1行目, conclusion を読んで理解できれば (良い論文は)7-8割ぐらいは理解できていることがわかりました。


もちろん論文を書く際には materials and method の部分が重要で、統計の知識ももちろん大事なのですが、まずは理解を追いつかせるということで、この部分をサッと読んで理解できるようにしました。


ちなみに、僕の場合 論文にアンダーラインはあまり引かず、上記の使えそうな文章や単語だけチェックを入れていました。




まずは A, B,Cのこの3つのタスクを行えば,  論文に関する英語力はそこそこ良くなると思います。

実際に 私は卒後5年目の際に、この方法を実践して、論文をだいぶ早く正確に理解できるようになりました。

もし良ければ実践してみて下さい (^^)




②の留学のための英語学習については、次回の記事にまとめます!
 

以前の記事に、脊椎に関しての参考書を紹介させていただきましたが、今回は


医学論文 (特に, 英語論文)の執筆


に関して 、私が特に勉強になった、
是非他の先生にもオススメしたい参考書をご紹介したいと思います!

ちなみに、僕の英語論文作成歴 (first authorとして) ですが、
医師9年目で2本の英語論文があり、3本の英語論文を現在投稿中です。

その僕が勉強になった参考書を挙げていきます。







1. 臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意


循環器内科がご専門の 原 正彦 先生が執筆された参考書です。
この参考書を特にオススメしたい理由は,


・ 研究したい!論文書きたい!とモチベーションを高めてくれる 
・ クリニカルクエスチョンから論文作成・投稿まで, 若手医師でもそれほどハードルが高くない内容で, 出来そうな気にさせてくれる



が大きな理由です。

世間には多くの医学英語論文の参考書が発売されていて、

私もそれなりに多くの本を読んできましたが、

臨床研究をやりたい!

って思わせてくれる本は、この本が1番だったと思います。


それは、著者の原先生が、
他の本の著者と比べると若手の先生 (医学部平成18年卒とのことです)
であるということ(私よりは医師として先輩ですので恐れ多い表現でスミマセン) と、


比較的若手の先生にも関わらず
業績がスゴイ、
論文を書きまくっている、
そして臨床研究学会などの立ち上げにも参画しておられる

などの点もあるのではないかな、と思いました。


ただし、内容としては入門書といった感じなので、
何本か既に書かれている先生には少々物足りないと感じそうです。








2. 必ずアクセプトされる医学英語論文 完全攻略50の鉄則


東京大学臨床疫学の康永秀生先生の著書になります。
クリニカルクエスチョンの立ち上げから
英語論文の書く際の注意点や心構え、
さらには英語論文の読み方まで言及されている、
まさに指南書です。

この本のオススメしたい理由は


・ 実際の英語構文の書き方まで言及していて、すぐに実践できる内容が多い (平易な英語構文の推奨)。
・ 各パートの鉄則、投稿に関わる情報について、詳細に言及している。
・ Revise後のeditorとのやり取りなどの解説が詳しい。


という点です。
とにかく具体的に書いてある、というところがこの本のスゴイところで、
この著書を横に置いて論文を書くのが良いと思いますし、
自分もそのようにして論文を書きました。

論文は simple is best なんだと気付かされる名著です。









3. 時間がなくても、お金がなくても、英語が苦手でも、論文を書く技術


この著書のコンセプトは、
いかにコスパ良く英語論文を仕上げるか
というところで、そのための方法が惜しみなく記載されています。

Google翻訳の上手な活用方法から、
研究テーマの設定のためのビジネス思考など、
単なる英語論文の粋を超えて、
日常診療などにも役立つ知識が豊富に書かれています。

特にこの本が良かったのは、

・ 著者の実践的な経験談をベースにして書かれてある
・ 分量を抑えていることで、すぐに通読することができる

点でしょうか。上記2冊の本もそうなのですが、
こういった how to 本は分量の多いものが多いのですが、
これらは重要な部分のエッセンスを記載してあるので、
忙しい先生方でもすぐに通読できてしまうところがいいところです!








論文の執筆には統計学的な知識は必須になりますし、
統計学についての勉強も必要にはなりますが、
今回は医学統計に関する参考書は除外して、
「英語論文執筆」に関しての有用な参考書を挙げてみました。


ご意見・ご感想などあれば記入してもらえれば嬉しいです。
よろしくおねがいします。 



 

前回記事の続きになります。



5. Research experience

このパートは、自分の研究内容を主に記載しますので、
ある程度の概要を書くことになりますが、
前出のawardなどを取った研究や、
科研費・奨学金などを取得した研究については、
そのこともアピールしておく方が良いと思います。

また、他学部や企業などとのコラボレーションをした研究についても、
その旨を入れておく方が良いでしょう。

そうすると、他職種との協調性や職務を円滑にできること
アピールできますし。

それと同様に、例えば多施設研究で自分が論文執筆などで
主に関わったりした場合も、良いアピールチャンスだと思います!

多施設研究はこれから多くなってくると思いますし、
そこでkey personとしてまとめ上げていれば、きっと高評価でしょう。




6. Publications

ここは、特に小細工なしで書くしかないパートだと思います。

一般的な評価は
「英語論文(impact factorあり)>英語論文(impact factorなし)>>日本語論文」
ですので、
impact factorのつくジャーナルへの投稿、そしてアクセプトを目指すしかありません。

ここが最も根気のいるところですね…

また、あまりに数が少なくて困る場合には、
共著者として入れてもらった論文も加えるといいかも知れませんね。
特に英語論文のco-authorだと良さそうです。




7.  (Academic) Presentations

いわゆる学会発表ですが、他にもシンポジウムや、講演等も含まれます。

私のように若手のうちは、学会での一般口演やポスター発表がほとんどだと思います。

「英語発表>>日本語発表」

ですので、やはりここも、頑張って海外学会に参加して発表することが肝要になります。




8. Examinations

ここは、私自身が最も学生時代からやっときゃ良かったなと後悔したところです

特に、USMLEのスコアなどは一番のアピールポイントになりますし、
そうでなくともTOEFLやIELTSなどのスコアは、
(いいものだけ)載せるのにはもってこいだと思います。

ちなみに、これは英会話の先生から教えてもらったのですが、
一般的に英語圏の国の大学や大学院で認知される、
英語力を証明できる資格はTOEFLかIELTSのようです。


日本だとTOEICや英検もありますが、始
めから海外でのキャリアを考えているのであれば、
そのどちらかの勉強をするのがいいかと思います。

例えば海外のMPHを受験する際には、
TOEFLとGREという2つの試験が必要になりますし。




9. Professional associations

整形外科医 (脊椎外科医) の場合だと、
日本整形外科学会(JOA)や日本脊椎脊髄病学会(JSSR)などでしょうか。

海外学会のmemberであれば、その方が評価は高いとは思いますが、
ここは自分でもあまり気にせず記載していました。




10. Special skills

もしプログラミングや何らかのスキルがあれば、アピールになると思います。

私の先輩医師は、ここに
有限要素解析のツールである「ansys」のトレーニングを受けて
userとして使えるということを記載しておられ、流石だなと思いました。

他にも、基礎分野だとRT-PCRやWestern blottingなどが出来るなど、
そういったスキルも記載すると良さそうです。








まとめ

例えば学生時代から、USMLEの試験に合格し、
基礎のラボに出入りして何らかの成果を積み上げていれば、
非常にアピールも大きいCVになるのでしょうが、
僕のような体育会系の頭では到底ムリでした。笑


そこで、医者になってようやく頑張りだした僕が、
もし研修医に戻れたとしてCVを真剣に考えたらどうなるのか
と思ったのがこの記事を書いた動機になります。


で、その結果、思ったことは、

「いかにチャンスを掴むか」

が大事なんじゃないかな、と感じました。


「チャンス」

とはつまり
学会発表のチャンスだったり、海外学会の発表のチャンスだったり、
論文執筆のチャンス、さらにはその最たるものがawardの獲得だったりすると思います。


普段からそういった事にアンテナを張っておき、
上級医や教授などからのチャンスがあれば
いつでも引き受けられるように準備をしておく

それが充実したCVを作成する秘訣
なのではないでしょうか? 



長い記事になってしまいましたが、 
最後までお読みいただきありがとうございました m(__)m


はじめまして。

このブログは1整形外科医 かつ ひよっこ脊椎外科医が、
一人前の医者を目指すブログ 兼 備忘録 です。

今までの自分の歩んできた道と、これからを
徒然なるままに書いていこうと思います。

よろしくおねがいします。



自己紹介をまずは簡単に。

現在、医師9年目(に入ったばかり)の整形外科医で、
大学院4年生で大学院はラストイヤーです。

大学院では、脊椎外科(臨床系)と生体材料(基礎系)の研究を並行してやっています。


まだ学位は取得できていないのですが、
来年4月(大学院卒業後)よりアメリカで臨床研究留学を開始する予定です
(先日、教授からお許しを得たばかりの状況で、行く予定の場所以外ほとんど何も決まっていません)。


大学院に入っている前後から、留学の可能性を考えて、
英語の勉強やこれまで関連病院で経験した症例などの
論文の執筆は行っていましたが、この1年でとにかく留学までの足がかりを作っていく予定です。






今私が取り組んでいることとしては、


1. 論文執筆

現在取り掛かっているのは 3本, 臨床 1本と基礎 2本。
特に学位がかかっている基礎の論文がいつ書けるか...
まだ結果が一部足りていない。



2. 英語

実は留学先が決まる前に、自分なりに勉強をと思い IELTS (英語資格) の勉強を開始。
今の自分のスコアは6、これを留学までに7に引き上げることが目標。 



3. バイト、奨学金申請

留学をするのはいいものの、無給
(どころか、先方からはvisitor feeを払えと言われていて、本当にお金の工面が厳しい)。

この1年でバイトと、後は留学に向けた奨学金申請をぼちぼち開始する予定。



こんな内容に沿って、このブログの内容を進めたいと思います。


同じような境遇の方がおられたら、
是非コメントなど頂ければ嬉しいです。

よろしくおねがいします。
 

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