前回記事の続きになります。
【※ 前提として、頚椎の理想的な矢状面アライメントというのはよくわかっておらず、まだコンセンサスが得られていない部分が多くあります。ですので、今後その考え方や手術戦略も大きく変化する可能性はあります。】
頚椎の矢状面アライメントを考える上で、大きく4つに分けて考えてみたいと思います。
1) 頭位と水平視
2) 上位頚椎アライメント
3) 中下位頚椎アライメント
4) 胸腰椎アライメントと頚椎アライメントとの関連
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1) 頭位と水平視
まず、腰椎のそれと比較した場合の頚椎の矢状面アライメントが重要な理由として、ヒトの生活動作を考えると
立位において視線を維持する
という点が重視されます。眼球の可動域は加齢に伴い減少することが知られていて、60歳以降だと
上方視:30度、下方視:75度 程度になると言われています。
(Clark RA, et al. J AAPOS 2001)
ですので、眼球の上方視を超える30−40度以上の前屈位 (drop head)になってしまうと、水平視が困難になってしまいます。
一方で、高齢者は歩行能力の低下に伴って(視覚での代償のため) 下を見ながら歩く傾向がありますので (Yamada M, et al. Arch Gerontol Geriatr 2012)、頚椎のアライメントを矯正する場合には下方視についての配慮も必要になってきます。
眼球の下方視の可動域が75度程度と考えると、頚椎の屈曲によって15度以上の下方視が可能であれば、下を向くことが可能と考えられます。
この水平視の基準となるパラメータとしては、
chin-brow vertical angle (CBVA) と McGregor's slope (McGS) があります。
(Lafage R, et al. Neurosurgery 2016.より抜粋)
A) chin-brow vertical angle (CBVA)
CBVAは、前額部と顎を結んだ line と地面の垂線とのなす角をさします。
Ankylosing spondylosis を有する患者におけるCBVAの矯正角度は、過去の報告では -10度から10度 (正は下向き、負は上向き)と言われており、水平視を定める上で最も重要なパラメータと考えられています。
(Suk KS, et al. Spine 2003.)
B) McGregor's slope (McGS)
McGSは、McGregor 線 (硬口蓋から後頭骨下縁に引いた線)と水平線とのなす角を指します。
Lafageらの報告では、CBVAとMcGSは強い正の相関をもち、平均値はCBVAが0.7 ± 8.1°, McGSが-0.9 ± 8.4°であったそうです。同論文での推奨値は、CBVAで-4.8° 〜 17.7° (正の値が下向き)、McGSが -5.8° 〜 14.4° (正の値が下向き)としています。
(Lafage R, et al. Neurosurgery 2016.)
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2) 上位頚椎アライメント
C1-C2は解剖学的に頚椎の中で最も回旋可動域が大きく、それだけではなく前後屈においても重要な役割を果たしています。その中での重要な指標としては、O-C2角が知られています。
O-C2角は、McGregor 線とC2椎体終板を結ぶ線とのなす角を指します。
(Ota M, et al. Spine 2011.より抜粋)
O-C2角の正常値は、Otaらの報告によると、健常人の中間位 (水平視)で15.6 ± 6.7° となっていますが、機能撮影でも値は大きく変化し、また健常人でも-5° 〜 35°とばらつきが大きくなります。
(Ota M, et al. Spine 2011.)
これらから、頚椎後弯症などの頚椎sagittal imbalanceの矯正手術を行う場合、目安となるO-C2角は約15-16°と考えて良いかと思われます。さらに、前述したMcGSの目標値も考慮すると、
McGS + O-C2 角 = C2椎体終板と水平線とのなす角 = C2 slope
が およそ15°となるようにする事が目標になるのではないかと思います。
長くなりましたので、続きは次回に。
【※ 前提として、頚椎の理想的な矢状面アライメントというのはよくわかっておらず、まだコンセンサスが得られていない部分が多くあります。ですので、今後その考え方や手術戦略も大きく変化する可能性はあります。】
頚椎の矢状面アライメントを考える上で、大きく4つに分けて考えてみたいと思います。
1) 頭位と水平視
2) 上位頚椎アライメント
3) 中下位頚椎アライメント
4) 胸腰椎アライメントと頚椎アライメントとの関連
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1) 頭位と水平視
まず、腰椎のそれと比較した場合の頚椎の矢状面アライメントが重要な理由として、ヒトの生活動作を考えると
立位において視線を維持する
という点が重視されます。眼球の可動域は加齢に伴い減少することが知られていて、60歳以降だと
上方視:30度、下方視:75度 程度になると言われています。
(Clark RA, et al. J AAPOS 2001)
ですので、眼球の上方視を超える30−40度以上の前屈位 (drop head)になってしまうと、水平視が困難になってしまいます。
一方で、高齢者は歩行能力の低下に伴って(視覚での代償のため) 下を見ながら歩く傾向がありますので (Yamada M, et al. Arch Gerontol Geriatr 2012)、頚椎のアライメントを矯正する場合には下方視についての配慮も必要になってきます。
眼球の下方視の可動域が75度程度と考えると、頚椎の屈曲によって15度以上の下方視が可能であれば、下を向くことが可能と考えられます。
この水平視の基準となるパラメータとしては、
chin-brow vertical angle (CBVA) と McGregor's slope (McGS) があります。
(Lafage R, et al. Neurosurgery 2016.より抜粋)
A) chin-brow vertical angle (CBVA)
CBVAは、前額部と顎を結んだ line と地面の垂線とのなす角をさします。
Ankylosing spondylosis を有する患者におけるCBVAの矯正角度は、過去の報告では -10度から10度 (正は下向き、負は上向き)と言われており、水平視を定める上で最も重要なパラメータと考えられています。
(Suk KS, et al. Spine 2003.)
B) McGregor's slope (McGS)
McGSは、McGregor 線 (硬口蓋から後頭骨下縁に引いた線)と水平線とのなす角を指します。
Lafageらの報告では、CBVAとMcGSは強い正の相関をもち、平均値はCBVAが0.7 ± 8.1°, McGSが-0.9 ± 8.4°であったそうです。同論文での推奨値は、CBVAで-4.8° 〜 17.7° (正の値が下向き)、McGSが -5.8° 〜 14.4° (正の値が下向き)としています。
(Lafage R, et al. Neurosurgery 2016.)
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2) 上位頚椎アライメント
C1-C2は解剖学的に頚椎の中で最も回旋可動域が大きく、それだけではなく前後屈においても重要な役割を果たしています。その中での重要な指標としては、O-C2角が知られています。
O-C2角は、McGregor 線とC2椎体終板を結ぶ線とのなす角を指します。
(Ota M, et al. Spine 2011.より抜粋)
O-C2角の正常値は、Otaらの報告によると、健常人の中間位 (水平視)で15.6 ± 6.7° となっていますが、機能撮影でも値は大きく変化し、また健常人でも-5° 〜 35°とばらつきが大きくなります。
(Ota M, et al. Spine 2011.)
これらから、頚椎後弯症などの頚椎sagittal imbalanceの矯正手術を行う場合、目安となるO-C2角は約15-16°と考えて良いかと思われます。さらに、前述したMcGSの目標値も考慮すると、
McGS + O-C2 角 = C2椎体終板と水平線とのなす角 = C2 slope
が およそ15°となるようにする事が目標になるのではないかと思います。
長くなりましたので、続きは次回に。